カワゴエドラムクラブの生徒さんで、自分のYoutubeチャンネルで叩いてみた動画をUPしている方がいます。
ご本人・親御さまの許可をいただいで共有させてもらいますね。
めちゃカッコよく叩けていますね!
彼、この時点でドラム始めて2年くらい。
技術ももちろん高いですが、どんなふうにドラムを叩きたいか、どんな風にドラムを叩いている自分を見てもらいたいか、という部分の意思がはっきり感じられて好感ですね!
ドラムクラブでは年1回の発表会を2,3月頃に行っていますが、それ以外にもこんな形で自分の演奏を発表する方法もあるわけで、良い時代になったものです♪
彼は本番の機会を増やしたい、増やして成長したい、との意思でこの動画投稿を始めることにしたそうですが、非常に理にかなっていると感じます。
本番での真剣勝負こそが、実力を大きく成長させてくれるからです。
ちょっと考えていってみましょう!
1. 100の練習・レッスンより、1回の本番?
2.【準備の違い】1回の本番が、レッスン・練習・準備のクオリティを上げる
3.【精神的な違い】逃げ場のない本番のその瞬間にどう振舞うか
4.【反省の違い】事後の振り返り・フィードバックの密度が段違い!
1. 100の練習・レッスンより、1回の本番?
私はドラムを始めて半年後に、人生初のドラムの本番を経験しました。
今思えば、バンドメンバーもおらず、バックトラックを流すこともなく、音楽室にドラムだけ並べて4分くらいの曲をドラムだけでただひたすら叩くという狂気の本番でした。
オーディエンスも、曲らしき何かが進行してはいるのはわかるが、聞こえてくるのはひたすらドンドンタンツカ ドンドンタンツカ ドンドンタンツカ タカタカジャーンの繰り返しなので、
3分過ぎたあたりからみんな爆笑だったのを覚えていますw
そんな状態でしたが、私は本番を人前で演奏することは最初から決めていました。
というのも、たった1回でも本番を経験するかしないかで、芸事の成長は大きく異なってくることを知っていたからです。
下手すれば、本番なしに100回の練習やレッスンをこなすことよりも、ただ1回の本番をやり遂げることの方がはるかに成長するなんてこともありえます。
2.【準備の違い】1回の本番が、レッスン・練習・準備のクオリティを上げる
「100回の練習より1回の本番!」と書きましたが、もちろん何の練習も準備もなしに本番と称して人前でバンバン発表を繰り返せというわけではありません。
本番という目標があることで練習や準備の質が劇的に変わる、ということです。
同じような練習・レッスンに向かう2人の人がいるとして、本番があるのとないのでは目標意識が大きく異なります。
昔、元サッカー日本代表の岡田監督が母校の早稲田大学の学生さんに講演した内容の記事を読んだのですが、「皆さんはいろいろな本を読んだりして目標設定の大切さを知っていると思うが、今皆さんが思っている10倍は目標って大切です」と語っていたのをよく覚えています。目標はすべてを変えると。
本番という目標が1つあるだけで、
・今の譜読みのペースで本番に間に合うだろうか
・本番できちんとパターンをグルーヴさせられるだろうか
・本番で最後まで見せきるのに十分な楽曲理解はできているだろうか
・最後、舞台で一人で最後まで演奏できるだろうか
最終目標が本番での演奏なわけで、そこに向けての必要な練習や準備が具体的になります。
そこに到達していない現状があれば切迫感をもって練習や準備にあたることになり、この違いが1回1回の練習・レッスンの差になり、成長曲線に大きな違いを生むのです。
3.【精神的な違い】逃げ場のない本番のその瞬間にどう振舞うか
同じアートでも、絵画・執筆・工芸などの締め切りまでに何かを生み出す、ジェネレート系のアートに対して、音楽・ダンス・芝居など本番の瞬間にパフォーマンスとして発揮する系のアートでは、アートの発表の仕方が大きく異なりますよね。
そう、本番の有無です!
パフォーマンス系のアートでは本番で出せるもの・出せたものがすべてです。
極端な話、本番がダメダメだったら、それまでの練習や準備がいくら完璧だったとしてもダメダメだった本番で評価されるしかないのです。
スポーツと似た要素でもあります。
そういう意味でも本番というのは恐ろしいものですよね。
初学者の人ほどその恐ろしさを感じるでしょう。
舞台に立つ人はみんな孤独です。
家族や友達、先生や師匠からも切り離されて、演者と観衆という立ち位置に閉じ込められ逃げ場もなく、どんどん過ぎていく時間の中で自分のやるべきことを自分の責任で発揮しなければなりません。
もちろん共演者がいることはあるでしょうが、共演者が助け合える範囲というのは案外限定的なものです。
そんな恐ろしい本番で実力を発揮するためには、使い古された言葉ですがある程度の精神力が必要です。
より具体的に言えば、土壇場でのパフォーマンスに特化した精神力といいますか、火事場の馬鹿力ともいうし、開き直りの精神ともいえるし、客席と舞台を上空からメタ的に俯瞰する神の視座に到達するとか………。
…初学者の方はこんなことまで考えなくてよいですw!
本番を10回20回とこなすと見えてくるハナシですので。
「当たって砕けろ!で、まずは1回やってみる」
で十分です。
上でも書いたように、いくら準備を入念に積もうが、本番を想像してトレーニングしようが、実際に本番に臨んでみなければ本番の感覚とは掴めないものです。
それでいて、1回やってみれば過去の自分とは決定的に変わります。
どんなにボロボロでも良いので、本番に持ち込むことが成長のカギです。
不思議なことに、1回発表会やら本番やらをやってみて、
「もうこりごりなので発表は二度とやりません」
という人はかなり少ないです。
自分の生徒だとほぼいたことがないです。
仮にどんなに本番がボロボロだったとしても、ケロッと次の本番の話をさせていただけることがほとんどです。
4.【反省の違い】事後の振り返り・フィードバックの密度が段違い!
上で書いた目標設定の話とも関連しますが、適切な目標を設定してそれに向かって準備をして、いざ本番を迎えればパフォーマンスの良しあしによらず、大きなフィードバックを得られます。
フィードバックや反省はめちゃくちゃ大切です。
可能な限り本番のパフォーマンスを振り返り、分析・解析・評価した方がよいです。
録音や撮影をしておくとベスト!
「練習・準備→本番→振り返り」のサイクルを回すだけで、本当に書き切れないくらいのフィードバックが得られます。
例えば、
・本番の目標に向かってこんな練習をした
→効果が高かったor低かった
→それは本番でも発揮されたor本番では発揮されなかった
・練習の通しテイクと比べて本番はどうだった?
→練習ほどうまくいかなかったorむしろ練習より良いテイクが出た
・本番中の心理状態を思い出し、反芻する
→次の本番に向けてのマインドセットを構築する
などなど。
だから本番を2回3回と繰り返し挑戦していくと、練習や準備のクオリティも、本番時の精神力もどんどん上がっていくのです。
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そんなわけで、本番が芸事の成長に及ぼす影響について考えていることを書いてみました。
私は生徒さんの本番後に、
「今までの発表は緊張が勝っていたけど、今回は楽しんでやることができました!」
と言ってもらえる時が最高に好きです!
人前で演奏するということは何にもかえがたい楽しさがあり、それを一人でも多くの人に感じてほしくてドラムを教えているので、こんな言葉は自分にとって最高の褒美なのです。